黒部川左岸絶壁の水平歩道               2008年10月

水平歩道は黒部川の仙人谷から欅平までの約13Kmにわたる登山道である。水平歩道も旧日電歩道と同じく元々登山道として作られたものではなく黒部川電源開発のための工事用に黒部峡谷左岸の絶壁をコの字形(あるいはCの字形)にくりぬいて作られており、標高約1000mの等高線に沿って岩盤が水平に開削されている。アルミニュウム精錬のために大量の電力を必要とした東洋アルミナム(株)により開削された。水平歩道は黒部川第三発電所の建設資材の運搬に利用されたが重い荷を背負ったボッカの転落事故が相次いだという。現在は旧日電歩道も含め関西電力(株)が管理を引き継ぎ整備を行っている。

黒部川左岸の絶壁に水平歩道は作られている。ここから転落すると救助も収容も難しいことは一見して分かる。

折尾谷の滝。折尾谷が水平歩道と交わる場所は、この滝つぼ直下。そこには岩留めの堰堤があり堰堤内が狭いトンネルになっている。登山者はこの滝の水が流れる下のトンネルを通って対岸に渡る。

← 垂直の岩壁をくり貫いた水平歩道。

カメラの三脚を持って行かなかったためザックの上にカメラを置いてセルフタイマーで撮影したらカメラが動いてしまって首から上がちょん切れた。不吉だ。
撮影する時には、まずザックが倒れて崖下に転落しないようにザックを慎重に狭い水平歩道に置く、そしてカメラも落ちないようにセットして(カメラの位置が谷側を避け山寄りになっているでしょ)、自分も落ちないようにザックを跨いで急いで撮影ポイントに移動した。その結果がこれだ。

これは水平歩道を振り返って歩いて来た方向を撮影している。そのため谷側が上の写真とは反対になっている。下の地面はしっかりしていて針金も設置されており雨が降っていなければ滑ることもなく歩きやすい。

水平歩道があくまでも水平に続く →

水平歩道が志合谷を横切る場所には谷を渡るために長いトンネルが掘られていた。中は真っ暗なためライトが必要。この谷では雪崩が頻繁に発生するという。1938年に発生した泡雪崩では発電所建設工事のための鉄筋コンクリート製宿舎が黒部川対岸600mまで吹き飛ばされ84人の犠牲者が出たという。

志合谷の地下の硬そうな岩盤に穿たれたトンネルに入るとライトの明かりに岩盤表面の鉱石が青白くキラキラ光る。輝石安山岩や角閃花崗岩とかの結晶だろうか。
35年前に来た時にはこのトンネルは無かった。確認したところ21年前に雪崩を避けるために造られたという。

← 水平歩道を行く登山者。水平歩道の真ん中あたりに5〜6名の登山者が歩いている。

さらに水平歩道はどこまでも続く →

← それにしても発電所建設工事にも増して水平歩道の開削工事も大変だったのではないだろうか。

頭上の岩がゴソッと崩れ落ちてこないか心配になる。

今日は午前中だけで3回も黒部峡谷沿いに救難ヘリが飛んで行くのを見かけた。遭難か急病人でも出たのだろうか。

黒部川水系の水力発電所で発電された電力を送る送電線が峡谷の上を走る。

かなり古い欅平上部の標識。黒部ダムからここまで28.9キロ、ここから欅平駅まで1.3キロとある。黒部ダムから欅平駅まで30キロの道のりということになる。

そして黒部峡谷鉄道 欅平駅に到着。あとはトロッコ電車に乗って宇奈月温泉にでるだけ。ここまで来れば登山は無事終わったといえよう。

欅平で少し時間つぶしに祖母谷峡 名剣温泉まで歩いてみた。日本の秘湯を守る会という提灯がかかっていた。

黒部川本流の峡谷幅が一番狭いという猿飛峡。猿が黒部川の対岸に飛び移ったと言われている。

猿飛峡近くの花崗岩のくぼみにいた足がメチャやたらに長いザトウムシ。タランチュラではないので心配ご無用。

では欅平からトロッコ電車に乗って宇奈月温泉に向かおう。途中の谷に古風な橋が見られた。黒薙第二発電所の導水用水路橋のようだ。

トロッコ電車の黒薙駅。宇奈月温泉の源泉が湧き出している黒薙温泉に行くことができるが今日はスルー。

トロッコ電車はこんな感じ。吹きさらしの風になぶられながら進むので寒い。かなり長い車列で15輌編成くらいか。

終点 宇奈月に近づいてきた。宇奈月ダムとうなづき湖が車窓から見える。というかトロッコ電車には窓が無かった。

黒部峡谷鉄道の宇奈月駅に到着。赤い橋が二つ緑に映える。旧山彦橋(右)と弥太蔵橋(左)、弥太蔵橋の手前に目立たないが弥太蔵吊橋がある。

宇奈月発の欅平行きトロッコ電車が新山彦橋を渡って行く。行ってらっしゃぁい。

宇奈月と富山を結ぶ富山地方鉄道の宇奈月温泉駅。駅前に温泉の噴水がある。残念ながら今流行りの足湯設備は無い。

富山地方鉄道の赤錆びた線路の先の空が真っ赤に燃えた。黒部峡谷の旅の終りだ。また明日いいことがあるかな。あったらいいな。